試合情報
- 試合日: 2025年5月7日(水)
- 対戦相手: 横浜DNAベイスターズ
- 試合結果: 中日 2-1 DeNA
- 開催球場: バンテリンドーム
- 観戦者数: 36,290人
- 勝利投手: 大野雄大(6回2安打無失点)
- 敗戦投手: 大貫晋一(6回6安打2失点)
- セーブ投手: 松山晋也(1回2安打1失点)
- 本塁打: 上林誠知(中日)3号2ラン
- 試合時間: 2時間53分
- 対戦回数: 8回戦

試合概要
中日ドラゴンズは5月7日、バンテリンドームで行われた横浜DNAベイスターズとの一戦を2-1で制した。先発の大野雄大投手が6回2安打無失点の好投を披露し、今季初勝利を挙げた。打線は1回裏に上林誠知外野手の3号2ランホームランで2点を先制すると、そのリードを最後まで守り切った。横浜DNAは9回表に三森大貴内野手のタイムリーツーベースで1点を返したが、追いつくことはできなかった。
歴史の視点から見た今日の勝利
東北の伝統工芸「曲げわっぱ」と、今日の中日ドラゴンズの勝利には、一見すると関連性がないように思えるかもしれない。しかし、その製法と今日の試合展開には驚くべき共通点がある。
「適材適所」の美学 – 大野雄大投手の6回無失点
曲げわっぱは、杉などの柔らかい木材を蒸して曲げ、円形に成形する伝統工芸だ。職人は木目の特性を見極め、材料の持ち味を最大限に活かす。今日の大野雄大投手の投球もまさにそうだった。
大野は今季調子を上げられずにいたが、本日は持ち前の変化球の特性を活かし、相手打線を効果的に抑え込んだ。6回2安打無失点、3奪三振という結果は、素材の特性を見極め、適材適所で活かす曲げわっぱの職人技そのものだ。
江戸時代の工芸職人が素材の「節目」を避けるように、大野も横浜打線の強打者を巧みに「節目」を避けるよう制球して打ち取った。17世紀から受け継がれる職人の知恵と、プロ野球投手の駆け引きには共通する美学がある。
「一発の技」が持つ威力 – 上林誠知の3号2ラン
曲げわっぱ製作では、木材に対して一度の加熱・曲げ作業が決定的な意味を持つ。一瞬の判断と技で作品の出来が決まる。今日の上林誠知外野手の1回裏の一振りも同様だった。
カウント1-1からの一振りで放った右中間への鮮やかな弾道は、職人が一瞬で木材を理想的な形に曲げる瞬間のようだった。この一振りで生まれた2点が、この日の決勝点となった。
秋田の曲げわっぱ職人たちが、天保年間(1830-1844年)に技術を確立したように、上林も過去の経験から導き出した一瞬の判断で、チームに勝利をもたらす一打を放った。
「継承と革新」の精神 – 継投リレーの完成度
曲げわっぱは、伝統を守りながらも時代に合わせて進化してきた日本の匠の技だ。大館市などでは先人の技術を継承しながらも、現代のライフスタイルに合わせた新たな曲げわっぱの形を模索している。
今日の中日の継投リレーも同様だ。大野から清水、マルテ、松山へと続くリレーは、伝統的な勝利パターンを踏襲しながらも、各投手の特性を活かした革新的な采配だった。特に9回、松山投手は横浜打線に1点を許しながらも、持ち前の精神力で最後を締めくくった。
明治期に曲げわっぱ職人たちが西洋の技術を取り入れながらも日本の伝統を守ったように、松山も海外で学んだ経験を活かしつつ、日本球界の伝統的なクローザー像を体現した。
日本の伝統と球界の未来
江戸時代から脈々と受け継がれる曲げわっぱの技術は、素材選び、手仕事の丁寧さ、実用性と美の融合など、日本のものづくりの神髄を今に伝えている。それは野球というスポーツにおける「投手力」「一発の長打」「チームワーク」といった要素と不思議なほど共鳴する。
中日ドラゴンズのこの日の勝利は、シンプルながらも奥深い日本の伝統工芸のように、基本に忠実で無駄のない野球の美しさを見せつけるものだった。大野雄大投手の今季初勝利は、長い冬を経て春を迎えた職人の再生のようでもある。
明日も中日ドラゴンズが、伝統を受け継ぎながらも革新を続ける「匠の技」のような野球を見せてくれることを期待したい。古来より日本人が大切にしてきた「和」の精神と「技」の追求が、ナゴヤドームのダイヤモンドで輝く瞬間を、これからも見守りたい。
そして何より、この日の勝利が、曲げわっぱが使い込むほどに艶を増すように、チームの勢いとなって、今後の連戦につながることを願ってやまない。