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【ドラゴンズ歴史絵巻】江戸商人の損得勘定に見る逆転の美学

江戸時代の商人取引

試合概要


試合概要:シーソーゲームの末に訪れた悲劇

この試合、中日の先発マウンドに上がったのは、昨年10月以来の一軍登板となる松木平投手でした。彼はプロ初勝利をヤクルトから挙げており、この日も立ち上がりを9球で無失点に抑える堂々としたピッチングを見せます。 試合が動いたのは2回。中日はヒットと2つのフォアボールでチャンスを作り、2番の田中選手が左中間を破るタイムリーツーベースを放ち、まず1点を先制します。さらに4回には、山本選手のレフトオーバーのヒットでノーアウト三塁のチャンスを作り、キャッチャー石井選手の犠牲フライで追加点。2対0とリードを広げました。松木平投手は3回まで無失点と好投を見せましたが、この回で代打・宇佐見選手が送られ、マウンドを降ります。 しかし、ここからヤクルトが反撃を開始します。5回に吉田投手から北村敬選手がフォアボールとヒットで二死二、三塁とすると、岩田選手がライト前へ運び1点差に詰め寄ります。そして6回、ヤクルトは再びチャンスを作り、北村敬選手が走者一掃の2点タイムリーヒットを放ち、逆転に成功します。北村選手はヒーローインタビューで「すごくいい感じで振れている」「自信を持って結果を恐れることなく振れている結果が良い方向に繋がっている」と語り、チームを牽引する活躍を見せました。

試合は1点差のまま9回裏へ。ヤクルトは守護神・星投手がマウンドに上がりますが、中日はヒットとフォアボールで満塁の絶好のチャンスを迎えます。しかし、ノーヒットだった福永選手が空振りの三振に倒れ、万事休す。ヤクルトが接戦を制し、4対3で勝利を収めました。


中日ドラゴンズ、痛恨の敗戦とCS消滅の要因

今日の試合における中日の敗因を深く掘り下げてみましょう。

  1. 好機での一本の欠如 9回裏、ヤクルトの守護神・星投手から満塁のチャンスを作りましたが、ここで追加点を奪えず、空振り三振で試合終了となりました。岡林選手については、チームが変わろうとしているのは間違いないと感じますが、結果が伴っていないのは残念です。「ここ一番のところなかなか勝ちきれない」というチームの課題が露呈したように見えます。
  2. 早期の投手交代とリリーフ陣の失点 先発の松木平投手は3回まで無失点と奮闘しましたが、4回の打席で代打を送られマウンドを降りました。これは経験の浅い松木平投手を守る意図もあったかもしれませんが、結果的にリリーフ陣がヤクルト打線に捕まり、逆転を許してしまったのは痛かったですね。
  3. 昨年から続く「9月の失速」 昨年のカープ(広島)も9月に元気がない時期がありましたが、中日も同様にこの時期に苦しんでいるように感じます。大事な時期に勝ち切れないという状況が、CS進出の可能性消滅に繋がってしまったのは非常に残念です。
  4. 個人成績への意識とチームの成績 岡林選手が最多安打のタイトルを狙える位置にいることに触れると、「こういう個人タイトルの話になるとちょっと寂しくなる」「もう少しねやっぱチームの成績がどうかっていう話を本当はしたい」というのが私の正直な気持ちです。チーム全体の成績が振るわない現状への歯がゆさを感じてしまいます。

明るい兆し:岡林選手の奮闘

このような状況でも、中日には明るい材料もあります。最多安打争いのトップに立つ岡林選手は、今日の試合でも奮闘を見せました。岡林選手のような選手が出てくることによって、チームの皆の目線も目つきも変わってくるでしょうし、チームが変わろうとしているのは間違いないと私は感じています。彼の存在がチームに良い影響をもたらすことに期待を寄せています。


セ・リーグ順位の現状 この試合の結果、セ・リーグの順位は3位DeNAと4位中日のゲーム差が4.5に広がり、中日の自力CS進出は消滅しました。5位広島も0.5ゲーム差で中日の後ろに続いています。


厳しい結果となりましたが、若手選手たちの活躍は未来への希望を見せてくれます。特に岡林選手には、引き続きチームを引っ張る存在として、個人タイトルも目指しつつ頑張ってほしいですね。

試合記録


試合日: 2025年9月9日(火)
対戦相手: 東京ヤクルトスワローズ
試合結果: 中日ドラゴンズ 2-3 ヤクルトスワローズ
開催球場: 神宮球場
観戦者数: 25,823人
勝利投手: 松本健(1勝0敗) 5.1回 2失点
敗戦投手: 吉田(0勝1敗) 2.2回 3失点
セーブ: 星知也(1勝2敗11S)
本塁打: なし
試合時間: 3時間18分
対戦回数: 20回戦


序章:損得勘定の妙味

2025年9月9日の夜、神宮の杜に響いたのは、まるで江戸時代の商人たちが繰り広げた駆け引きのような、息詰まる攻防戦だった。先制して優位に立ったドラゴンズが、終盤の逆転劇で苦杯を舐める展開は、かつて江戸商人たちが「先んずれば人を制す」と信じながらも、最後の詰めの甘さで大損失を被った数々の商談を思い起こさせる。

今回は、この試合を通して、江戸時代の商業精神と現代野球における戦略の共通点を探りながら、「勝ち」と「負け」の境界線がいかに微妙なものかを考察してみたい。

第一章:田中幹也の「先手必勝」~近江商人の三方よしに学ぶ~

2回表、無死一二塁から放たれた田中幹也の適時二塁打は、まさに近江商人が説いた「先手必勝」の精神そのものだった。近江商人の経営哲学「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)が示すように、彼らは常に先手を打つことで信用を築き、長期的な利益を確保していた。

田中の一打は、単なる得点以上の意味を持っていた。それは江戸時代の豪商・住友家初代の蘇我理右衛門が銅山経営で見せた「機を見るに敏」な判断力と重なる。蘇我は市場の変化を敏感に察知し、他の商人が動き出す前に投資を決断することで、住友財閥の基盤を築いた。同様に田中のタイムリーヒットは、奥川の立ち上がりの隙を見逃さない野球における商才の表れといえよう。

しかし、近江商人が「始末してきばる」(無駄を省いて努力する)という教訓を残したように、先制の利を活かすためには継続的な努力が必要だった。

第二章:石伊雄太の犠牲飛~武士道における「義理と人情」~

4回表の石伊雄太による犠牲フライは、江戸時代の武士階級が重んじた「義理と人情」の精神を体現していた。この時代、武士は個人的な功名よりも主君への忠義を優先し、時には自らの生命さえ犠牲にした。石伊の犠牲フライは、まさに現代野球における「忠臣蔵」的な美学を感じさせる。

特に、元禄時代の大石内蔵助が見せた「大義のための個人犠牲」の精神との類似性は興味深い。内蔵助は主君浅野内匠頭の仇討ちという大義のため、自らの名誉や地位を度外視して復讐計画を練り上げた。石伊の犠牲フライも、個人の打撃成績よりもチームの勝利という大義を優先した行為であり、江戸武士道の「滅私奉公」の精神が現代に息づいている証拠といえる。

この場面で特筆すべきは、山本瑠伟の三塁打が「機会創造」の役割を果たしたことだ。これは江戸時代の参勤交代制度における「お膳立て」の概念と通じる。参勤交代では、大名の威厳を保つため、事前に道中の準備を整える役目の者たちがいた。山本の三塁打は、まさにそうした「お膳立て役」の働きだったのである。

第三章:北村恵吾の逆転劇~幕末の開国交渉に見る「後手の妙手」~

6回裏、2死一二塁から放たれた北村恵吾の逆転適時二塁打は、幕末期の外交官・岩瀬忠震が見せた「後手からの大逆転」を彷彿とさせる場面だった。

岩瀬は1858年の日米修好通商条約締結において、当初は不利な立場に置かれながらも、粘り強い交渉術で日本にとって少しでも有利な条件を勝ち取った。特に「領事裁判権」という概念については、当時としては画期的な譲歩をアメリカから引き出している。北村の一打も、2アウトという絶体絶命の状況から、相手の慢心を突いた見事な「外交術」だった。

江戸後期の商人・本間宗久が米相場で編み出した「酒田五法」における「三川」(底値圏での反転シグナル)の考え方とも共通点がある。本間は「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言を残したが、これはまさに北村が見せた「逆張りの美学」そのものだ。2アウトから放たれた一打は、誰もが諦めかけた局面での「花の山」だったのである。

第四章:9回の満塁機~享保の改革における「詰めの甘さ」~

9回表、満塁の好機を活かしきれなかったドラゴンズの攻撃は、享保の改革(1716-1745年)における吉宗の「詰めの甘さ」を思い起こさせる。

八代将軍徳川吉宗は「享保の改革」で幕府財政の建て直しに取り組み、一定の成果を上げたものの、根本的な構造改革には至らなかった。特に「新田開発」や「年貢増徴」といった政策は短期的な効果はあったが、長期的な視点での制度改革が不十分だった。これは現代でいう「詰めの甘さ」そのものである。

ドラゴンズの9回攻撃も同様で、岡林勇聖の先頭打者安打で始まり、田中幹也の送りバント、細川成也への故意四球、ボスラーの四球で満塁と、まさに享保改革の初期段階のような順調な進行を見せた。しかし、最後の福永裕基の三振で終わった展開は、吉宗が最終的に抜本的改革を完遂できなかった歴史と重なる。

江戸中期の学者・荻生徂徠が『政談』で指摘した「始めよければ終わりよし」という教訓が、ここでも活きてくる。徂徠は政治における「初志貫徹」の重要性を説いたが、野球においても最後まで気を抜かない姿勢の大切さを物語っている。

終章:商人道と野球道の交差点

この試合を通して見えてきたのは、江戸時代の商人精神と現代野球における戦術の本質的な共通性である。「先手必勝」「義理人情」「逆張りの妙味」「詰めの重要性」―これらはすべて、時代を超えて通用する普遍的な価値観なのだ。

近世の商人たちが「信用第一」「長期的視点」「リスク管理」を重視したように、現代の野球チームもまた、一試合一試合の積み重ねが最終的な成功を左右する。今回の敗戦は確かに痛いものだったが、江戸商人の格言にある「失敗は成功の母」という教えを胸に、次戦への糧としていくことが重要だろう。

特に印象的だったのは、両チーム合わせて本塁打が出なかった点だ。これは江戸時代の「質実剛健」な商業道徳を思わせる。派手な一発勝負ではなく、コツコツと積み重ねる姿勢―まさに近江商人が大切にした「堅実経営」の精神が、現代野球にも息づいていることを感じさせる試合だった。

来る次戦こそ、ドラゴンズには江戸商人の「七転び八起き」の精神で臨んでほしい。25,823人の観衆が見守った神宮の夜は過ぎ去ったが、この敗戦から学んだ教訓は、必ずや今後の戦いに活かされるはずである。