
試合概要
- 試合日: 2025年6月28日
- 対戦相手: 広島東洋カープ
- 試合結果: 中日ドラゴンズ 1-2 広島東洋カープ
- 開催球場: バンテリンドーム ナゴヤ
- 観戦者数: 35,787人
- 勝利投手: 玉村 健太(4勝6敗) 7回 1失点
- 敗戦投手: 涌井 涼介(4勝3敗) 7回 2失点
- セーブ投手: ハーン(2勝1敗11セーブ) 2回 0失点
- 本塁打: なし
- 試合時間: 3時間26分
- 対戦回数: 10回戦

この試合は、交流戦が終わりリーグ戦に戻ってきた中で行われた熱戦でした。両チームともにここまで対戦成績が4勝4敗1分けという互角の状況で迎えた一戦であり、非常に重要な意味を持っていました。
先発投手陣
- 中日の先発は、プロ21年目、39歳のベテラン涌井秀章投手でした。交流戦では2連勝中と好調を維持しており、この日も立ち上がりから非常に落ち着いたピッチングを見せ、初回を三者凡退に抑える完璧なスタートを切りました。
- 対する広島の先発は、6年目24歳の玉村昇悟投手。ここまで3勝6敗という成績でしたが、この試合に勝利すればキャリアハイの4勝目となる状況でした。玉村投手はボール自体の速度が増し、左打者のインサイドへも投げ込めるようになるなど、切れのあるストレートを見せていました。
試合展開
試合は序盤から緊迫した投手戦となりました。両先発投手が互いに粘り強いピッチングを見せ、なかなかスコアボードに「0」以外の数字が並びません。
- 3回裏、中日が得点します。
- この回先頭の上林選手がヒットで出塁し、これで5試合連続安打となりました。
- 山本選手が送りバントを決め、ワンアウトランナー3塁と先制のチャンスを作ります。
- しかし、続く岡林選手がショートゴロに倒れ、広島の「全身守備」に阻まれる形となり、チャンスを活かせませんでした。
- それでも、上林選手が14個目の盗塁を成功させ、ツーアウトランナー2塁と再びチャンスを広げます。
- 細川選手がフォアボールを選び、ツーアウトながら1塁2塁と繋ぎ、打席にはこの試合最初の打席でヒットを放っているボースラー選手が入りました。
- ボースラー選手の打球はライトへ。岡林選手がホームへ突入し、一度はアウトと判定されます。
- しかし、中日側がリクエスト(ビデオ判定)を要求! VTR検証の結果、判定はセーフに覆り、中日が1対0と先制しました。これはボースラー選手にとって6月6日以来のタイムリーとなりました。この際、捕手への送球がもう少し三塁側にきていればアウトだった可能性も指摘されていました。
先制点をもらった涌井投手は、その後も好投を続けます。3回までノーヒットピッチングを続けるなど、チェンジアップやシュートが非常に効果的で、ゴロを多く打たせていました。4回までフォアボール1つとコントロールも素晴らしい内容でした。
- 6回表、広島が逆転します。
- 先頭の堂野選手がヒットで出塁。
- ランナーを1塁3塁に置き、打席には小園海斗選手が入ります。小園選手は初球から積極的に狙っていく打者であり、その積極性がこの場面で光りました。
- 小園選手が捉えた打球はワンバウンドでフェンス直撃の2点タイムリー2ベースヒットとなり、広島が2対1と逆転に成功します。小園選手は得点圏打率がリーグトップという勝負強さを見せつけました。少しシュート気味のボールでしたが、うまく救い上げた見事な一打でした。
- この回で玉村投手はマウンドを降ります。5回3分の1を投げて6安打1失点と、粘りのピッチングを見せました。
- 広島のリリーフ陣
- 広島はここから強力なリリーフ陣を投入します。2番手の中崎投手は連投でしたが、ワンアウトランナー1塁2塁のピンチで、バントでランナーを進められワンアウト2塁3塁となります。しかし、中崎投手は厳しいコースを攻め、見事なピッチングで後続を断ち切りました。特に代打の選手にはインサイドのストレートで見逃し三振に打ち取り、そのコントロールの良さが際立っていました。
- 7回は森浦投手、8回は栗林投手がそれぞれ無失点で繋ぎます。栗林投手は久しぶりの登板でしたが、完璧なリリーフに貢献し、スピードもまだ出ると期待されました。
- そして、1点差を守る9回には守護神のハーン投手がマウンドに上がります。
- 9回裏、中日の攻撃とまさかの結末。
- ワンアウトから代打の辻本選手がヒットで出塁し、ワンアウトランナー2塁とします。
- 続くブライト健太選手はファースト正面の打球に倒れ、ツーアウトランナー2塁。
- 打順はトップに返り、上林選手がレフトへ打球を放ちますが、ランナーは帰れず、ツーアウトランナー1塁3塁となりました。
- そして打席には好調の山本選手が入ります。ここで中日ベンチからまさかのホームスチールが敢行されます!
このホームスチールは、中日の井上監督による奇襲「ディレードスチール」でした。上林選手がリードを取ったところでわざと転び、それを見たハーン投手が冷静にプレートを外して、捕手の會澤選手(解説では倉選手や石原選手の声として「カモン」という指示があったと表現されていました)の声に合わせてホームへ送球したという経緯でした。広島の選手たちは、日頃からこのような作戦に対する「防御策」も練習していたため、ハーン投手も冷静に対応できたと解説されていました。
試合結果
最終的に、広島が2対1で中日に勝利し、接戦を制しました。
- 勝利投手は玉村投手で、自身キャリアハイとなる4勝目を挙げました。
- ヒーローは決勝打を放った小園海斗選手でした。
敗れた中日は、最後の奇襲が実らず、悔しい敗戦となりました。涌井投手は粘りのピッチングを見せましたが、打線の援護を得ることはできませんでした。
1. 舞台「バンテリンドーム ナゴヤ」と縄文文化の自然共生精神
この試合の舞台、バンテリンドーム ナゴヤは1997年開場。「ナゴヤドーム」から2021年に命名権取得によりリブランディングされました 。その設計や立地は、かつてこの地にあった三菱重工業の発動機製作所跡として歴史の層を重ねています。
このドームという先進的構造は、一見すると鋼鉄とコンクリートの人工物ですが、考え方を縄文時代の自然と共に生きる精神に重ねることができます。縄文人は自然の力を尊重し、多様な環境と調和して暮らしました。現代のドーム球場もこの地域社会に根ざし、気候変動や季節変化を制御して「快適な遊びと交流の場」を創っています。
つまり、縄文の自然共生精神と最新の建築技術が交錯し、古代から現代までの「人と環境の調和」を新たな形で実現しているのです。
2. 3回の先制点と中世中山道の街道整備—流れを変える交通網の意義
中日が3回に挙げた貴重な先制点は、試合の雰囲気を一時掌握する瞬間でした。これを中世の中山道整備に例えます。中世の中山道は京都と江戸を繋ぐ大動脈であり、街道整備が人・物資・情報の流れを円滑にし、地域経済や政治を活性化させました。
先制攻撃は中山道の開通のように、流れを変え、チームの勢いと連携を促します。しかし、その後の展開で中山道も幕末の鉄道整備に押されるなど変遷がありますように、この日の先制点も全体勝利には至らず、戦局の移り変わりの象徴となりました。
3. 6回表 広島が逆転2点を奪う場面と明治期の電信技術の革新
試合のターニングポイントとなった6回表、広島は2点を奪い逆転に成功しました。これは明治期に誕生した日本の電信技術の革新に比喩できます。当時、日本は欧米の通信技術導入によって国家情報の迅速な伝達を実現し、政治や軍事、経済の近代化を加速させました。
広島の「機動的な攻撃」と「計算された投手起用」は、まるで当日の電信が瞬時にメッセージを伝えたような効果を持ち、一気に状況を変えたのです。スポーツにおける「情報・戦術の刷新」がいかに勝敗に直結するかを示す好例として映ります。
4. 9回裏 中日の追撃と戦前日本の「精密工業」の精神
最後の9回裏にドラゴンズが必死に反撃した様子は、戦前日本の精密工業の技術者たちが高い集中力と根気で世界レベルの製品を作り上げた姿勢と共鳴します。彼らは高度な技能と継続的な挑戦をもって未踏の領域に挑み続けました。
この日のドラゴンズナインの粘り強さは、絶え間ない研鑽と精神力で技術革新を進めた歴史上の職人たちの姿に重なり、結果は惜敗でも「挑戦し続けることの価値」を教えてくれます。
結びにかえて—歴史の教訓と次への期待
今回ドラゴンズはあと一歩届かず惜敗を喫しましたが、試合を通じて古代縄文の自然共生から中世の街道整備、明治の通信革命、そして戦前の工業精神にいたる日本文化の多層的な歴史と重ねられるドラマを体験しました。勝利だけが全てではなく、歴史に学び挑戦を続ける姿勢こそドラゴンズの未来を拓く鍵です。
「バンテリンドーム ナゴヤ」という名の場は、古代から現代へと豊かな文化と技術が受け継がれる場所として、これからも我々に様々な知恵と感動をもたらしてくれるでしょう。
次戦以降も、番狂わせのドラマと歴史の対話をともに楽しんでいけることを願います。